はじめに
近年、保育現場でもDXが進んでおり、特に業務支援ツールの保育ICTシステムはすでに全国の保育施設の84%以上(※)で活用が進んでいます。
こうした時代の変化に対応し、保育士を目指す学生が現場で即戦力として活躍できるよう、保育士養成施設「こども學舎」では、実践的なICT活用に関する授業を導入しています。
本記事では、こども學舎における保育ICT授業の導入背景、具体的な授業内容、そして学生に与えた影響について授業を担当される先生に詳しくうかがいました。
※三菱UFJリサーチ&コンサルティング「保育施設等における ICT 導入状況等に関する調査研究事業報告書」令和7年3月
保育士養成施設 こども學舎
授業実施学部:保育士養成通学課程
定員数:160名
所在地: 札幌市中央区大通西18丁目2−8
授業を実施した科目名:保育ICT(選択科目、全15コマ)
受講学年:1年生(実習前)
受講人数:17名

授業実施の背景――なぜ今、「保育ICT」を授業で学ぶのか
ー 保育ICTに関する授業を実施された背景について教えてください。
近年、保育現場でのICT活用が進む中、学校・担当教員ともにICTに関する授業の必要性を感じていました。特に、保育現場から「ICT人材育成」に関する要望が強く、即戦力となる人材を求められていると感じていました。このような状況を受けて、今年度より「保育ICT」の授業を新設しました。
ー 学生には授業の目的をどのように伝えているのですか?
学生には、授業の冒頭で国の「GIGAスクール構想」にふれ、小学生になるとタブレットやパソコンを用いたデジタル教育が進んでいることを示し、保育の場においてデジタル教育の素地を育むことが求められる時代になっていることを説明しています。さらに、保育ICTは単なる事務作業の省力化のツールに留まらず、デジタル教育やICTで得られたデータを活用し、保育の質の向上を目指す「保育DX」の視点を持つことが求められることを伝えています。
具体的には、「保育ICTは、あくまで業務を省力化するための手段であり、導入してラクになったことで満足してはいけない。保育の質の向上を目指す保育DXに近づけていくことが重要」という点を強調しています。保育DXの視点で、一人ひとりの子どもに合わせたアドバイスや提案ができるようになるためには、まず保育ICTのスキルをしっかりと習得することが不可欠であると学生に伝えています。

授業概要――「保育現場のICTにふれる」実践的な学び
「保育ICT」の授業は全15回で構成されており、ICTツールの使い方を学ぶ「業務効率化」に関する講義が全体の4割、よりよい保育・教育に向けたデジタルツールの活用法を学ぶ「デジタル教育」に関する講義が6割を占めています。
ー 保育・教育施設向けICTサービス「コドモン」を用いた授業も行われていると聞きました。授業の内容を教えてください。
保育現場の経験がない学生に対して、保育ICTにおける業務効率化を理解させるには、実際に保育の現場で使われているICTツールを体験し、業務が「楽になる」という実感を持たせることが必要だと感じました。その具体的な体験ツールとして、現場でもっとも利用されているコドモンが真っ先に思い浮かびました。
授業では、合計2コマにわたり「コドモン」を活用しました。
私は、省力化を最も実感しやすい場面は、「保護者からの連絡」だと考えていたため、最初に学生一人ひとりに実際にコドモンの保護者向けアプリを使って、遅刻・欠席の連絡を入れてもらいました。続いて、それが園の管理画面に自動的に連携され、どのように表示されるのかを示しました。さらに、ICTを導入していない場合の状況をイメージしやすくするため、保護者連絡を電話で受けた場合の保育士の動きなどを私が実演しました。連絡関連の事務作業の省力化を学生たちに実感してもらえたと思います。
別の授業では、保育に必要な書類を手作業で作成する練習を通して、書類作成の基礎力を養っています。学生たちは日誌や個別支援計画、要録などの作成に四苦八苦していますが、一方で、コドモンではデータ連携によりボタンひとつで容易にできることを画面上で示すと、多くの学生が驚いていました。
私から説明した後、全員にコドモンの管理画面を操作して体験してもらいました。操作した機能は、「保護者からの連絡」、「デイリーボード(日誌や出欠確認の一元管理)」、「(子どもたちの)入退室管理」、「(保育士の)出退勤管理」です。これらの基本操作を体験した後は、各学生の興味に応じて機能を自由に操作してもらいました。

ー 授業の中で、保育ICT活用の他に特徴的な内容があれば教えてください。
ChatGPTなどのAIツールやGoogleレンズを保育に活用する具体的な方法を教えました。コドモンにもAIを使った機能があるように、保育にもAIの導入が進んでいます。一方で、まだ使い方に慣れていない学生も多いため、AI利用における注意点を説明したうえで、具体的な指示の出し方(プロンプト)に至るまで指導しました。
例えば、保護者からの相談に対して、AIを使って複数の回答案を素早く作成する方法を紹介しました。AIの回答案を参考にしつつ、保護者や子どもの具体的な状況などを踏まえて、適切な返答を組み立てられるようになります。AIを活用することで、より質の高い回答を導き出すことが可能であることを伝えています。
また、現場で重宝される基本的なデジタル知識も教えました。例えば、モニターに画面を表示させる際に必要なHDMI接続などの接続方法です。簡単に思えますが意外と知らない人が多いため、習得していると現場で役立つからです。

学生の変化――デジタルに強い保育士を育てる
ー コドモンを体験された学生の反応はいかがでしたか?
学生の声は、総じて高評価でした。座学だけでは得られない学びがあったようです。
アンケートからも下記のような声がありました。
・「実際に触って保育ICTによる効率化を体験・実感できる貴重な機会でした」
・「保護者として利用していて便利と思っていたが、管理画面を見て触ってこれ程、効率化できるとは思っていなかった」
・「初めて、このようなアプリを使って体験できて、保育ICTに導入している園に就職したくなった」
・「保育実習に行くイメージ、保育士として働くイメージがわいてきた。保育実習の記録(日誌)もこのようなシステムでできれば、保育施設も学生もお互い効率化できるのでは」
参考:【授業後アンケート結果】
◯ 授業を受けた現在、保育ICTについての印象はどう変わりましたか?授業を受けた後のあなたの印象に近いものを選んでください。 (複数選択可)

◯ 保育ICTが導入されている園への就職を希望しますか?

保育ICT導入園への就職を希望する理由(自由記述)
・効率的に使えれば子どもにかけられる時間が増やせると思った
・便利そうなのと、親も安心なので
・ICTは、ないよりは、あった方が便利だと思います
・ICTなどを活用して保育士の負担軽減に努める園には復職者も含め、求職者が増えていくのではないかと感じました
ー コドモンを活用した授業を実施して先生はいかがでしたか?
私自身コドモンを使用するのは初めてでしたが、「体験・経験に勝る学びはない」ということを改めて強く感じました。実際にふれる経験は極めて重要で、コドモンをまったく知らない学生と、学校でさわった経験がある学生とでは、就職先の施設での最初の印象が大きく異なると思います。保育の知識や経験で勝ることが難しい就職時の初期段階において、ICTの知識は大きな武器になります。さらに保護者・施設双方の使い方を理解することで、学生は保護者目線と保育士目線の両方を持つことができ、将来にわたる強みになります。
このような理由から、「これからはデジタルに強い保育士が求められる」と学生には伝えています。
来年度も、コドモンを活用して、学生がICTツールを体験する機会を継続して提供したいと考えています。
理事長・施設長の想い
ー 最後に理事長・施設長の河村 泰孝さまへおうかがいします。ICTに関する授業を取り入れた想いを教えてください。
保育園の園長先生にお会いする機会に、ICT導入後の保育士の業務負担軽減についてお尋ねすることがありました。「PCを含め、ICTを使いこなせる保育士が少なく、使い方をシステム会社に問い合わせて、ようやく活用できることがある」という感想をお聞きし、学生がICTにふれる実践的授業を開講することにいたしました。
保育士は、子ども達の成長を支え、笑顔を育む「保育」に専念できることが望ましいと考えています。その保育環境の構築は、「保育士不足問題」の改善にもつながると信じています。そのためには「ICT導入」と「保育補助者雇用」が益々進み、保育士が雑務に追われることなく、園児に向き合える時間が多くとれる「保育」の輪が更に拡がり、子どもたちが安心安全に成長できる環境が整うことを心から願っています。

NPO法人進学支援の会
指定保育士養成施設こども學舎
理事長・施設長 河村泰孝 さま
取材協力:指定保育士養成施設こども學舎
(※記事内容は取材時点のものです)
【保育士養成校の授業で活用できる保育ICT教材 無償提供プログラム】
コドモンでは、未来の保育士とそれを支える教員のみなさまへの応援企画として保育士養成校を対象に、保育現場で実際につかわれているものと同じ機能を授業で利用できる「保育ICT教材無償提供プログラム」を実施しています。ご興味のある養成校のご担当者様は以下のフォームよりお問い合わせください。
