保育士養成校

保育ICT検定を授業に取り入れ「キャリア形成」と「即戦力」になる人材を育成【短期大学でのICT授業実践事例】

はじめに

近年、保育現場ではデジタル化が急速に進み、特に業務支援ツールの保育ICTシステムはすでに全国の保育施設の84%以上(※)で活用が進んでいます。
こうした時代の流れを受け、第一幼児教育短期大学では、一般社団法人保育ICT推進協会が実施する「保育ICT検定」を導入しました。
本記事では、検定導入の背景、具体的な実施方法、今後同校で検討しているICT授業についてご紹介します。

※三菱UFJリサーチ&コンサルティング「保育施設等における ICT 導入状況等に関する調査研究事業報告書」令和7年3月

第一幼児教育短期大学

授業実施学科:幼児教育科
所在地:鹿児島県霧島市国分中央1-10-2
検定を実施した科目名:情報処理概論
受講学年:2年生
受講人数:68名
お話を伺った方:学科長 伊達幸博 さま

授業実施の背景――なぜ今、「保育ICT」を授業で学ぶのか

ー 保育ICT検定を授業に取り入れた目的を教えてください。

導入の目的は主に二点あります。一つは、学生に保育士・幼稚園教諭以外の資格(ダブルライセンス)を身につけてもらい、キャリア形成に役立てることです。もう一つは、就職後のミスマッチや負担の軽減です。学生がICTの基本を理解した状態で現場に入れば、就職後の不安を軽減できますし、受け入れる園側のICT研修負担を減らすという大きなメリットもあると考えました。

就職後の不安が軽減できれば、より理想とする保育が実践でき、早期離職の防止にもつながるのではないでしょうか。

保育分野においてICTは、園児の記録・健康情報・連絡事項などを視覚的に整理でき、一目で正確な情報を共有できる点に大きな利点があります。保育現場では日々多くの情報が行き交いますが、ICTが情報を見える形で蓄積してくれることで、職員間の連絡の行き違いを防ぎやすくなり、結果的に子どもの安全や安心につながる場面が期待できます。

ただ一方で、ICTの活用が進む中には、保護者との対話の機会が減ってしまうのではないか、という声もあります。デジタル化を進めることが目的化してしまわず、園ごとの特性や子どもとの向き合い方、保護者との関係づくりに応じて適切なバランスを取る必要があると考えています。

ICTには効率化や共有のしやすさといったメリットがある一方で、人と人との関係をどう丁寧に保つかという課題も存在します。だからこそ、メリット・デメリットの両面を理解しつつ、その園にとってより良いデジタル活用の姿を模索していくことが重要だと考えています。

授業の様子――実践的な学びの現場

ー 授業での検定の実施方法について教えてください。

今年度はまず、学生の反応を見るために初級検定を受験する方針を採りました。検定は、2年生全員が受講する必修科目「情報処理概論」の授業内で実施しました。この授業は、Word、Excel、PowerPointといったパソコンの初級スキルを学ぶ内容ですが、担当教員と相談し、課題を調整することで、授業の1コマを検定受験に充てた形です。

ー 検定を受験した学生の反応はいかがでしたでしょうか?

学生からは、就職活動を控えるにあたり、ICTの基本的な知識を体系的に学ぶよい機会になったという肯定的な意見が寄せられました。また、検定が概論を中心とする内容であるため、学んだ知識を「実際の現場で応用できるか」という点について、さらなる実践的な学びを求める声もありました。

学生たちがICT検定の学びを確かな実践力へとつなげられるよう、今後は学生が実際にICTを操作し、体験できる実践的な機会を創出できるよう検討を進めたいと思います。さらに、テキスト学習に加え、先生方が実際にICTを活用・操作する様子の動画など、視覚支援教材を取り入れることで、知識が現場でどのように活かされるのかをより具体的にイメージできるようにするのもよさそうです。

ー 検定に加え、よりICTに関して学びを深めていく際に、特に重要視している教育内容はありますか?

二点ありまして、一点目は単なるICTの知識の習得に留まらない、 より一歩踏み込んだ「データ分析の活用」です。例えば、ICTシステムに入力されたインフルエンザなどの欠席データを活用して、その推移を分析します。そうすると、「このクラスで増え始めている」「この地域全体で流行の兆しがある」といったことが見える化できるんです。

ただデータを記録するだけでなく、その分析結果をもとに、感染症予防の対策を打ったり、保護者の方へのアナウンスのタイミングを見極めたりする。この「データ分析の活用例」まで踏み込んでこそ、本当に現場で役立つと考えています。

そして二点目が、プロフェッショナルとしての「セキュリティとリテラシー教育」です。ご存知のように、保育士が取り扱う情報は、子どもの発達の記録、家庭環境、アレルギー情報など、個人情報や守秘義務の塊です。

システム側でいくら厳重に設定して、情報にアクセスできないように技術的な防御を固めても、「ヒューマンエラー」というのは必ず起こり得るんです。だからこそ、システム上の知識だけでなく、「私たち保育のプロは、この情報をどう扱うべきか」という、職業倫理に基づいたプロとしてのリテラシー教育が非常に重要だと考えています。

ICTをより安全に、そして効果的に保育に活かせる人材を育てていきたいと思っています。


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コドモンでは、未来の保育士とそれを支える教員のみなさまへの応援企画として保育士養成校を対象に、保育現場で実際につかわれているものと同じ機能を授業で利用できる「保育ICT教材無償提供プログラム」を実施しています。ご興味のある養成校のご担当者様は以下のフォームよりお問い合わせください。

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