保育士処遇改善の取り組みにはどんなものがある?

保育士処遇改善の取り組みにはどんなものがある?目指そう保育士

保育士は乳幼児の保育に関わる専門職です。その一方、責任が重い仕事でありながら賃金が低いことは長年問題視されてきました。低賃金は保育士の離職原因の1つにもなっています。
女性が長く活躍できる社会づくりや出生率の改善を目指すうえで、保育士の数を確保することは重要な課題です。
そこで、昨今では国や自治体が保育士の賃金を上げるため様々な施策を実施してきました。
今回は、保育士処遇改善のための具体的な取り組みについてご紹介していきます。

保育士の処遇改善はどうして必要なの?

国や自治体が保育士の処遇改善を行う背景には、専門職でありながら賃金が低い保育士の実態があります。
平成26年度の厚生労働省(保育士等に関する関係資料)による調査では、全職種の平均給料が約33万円なのに対し、保育士は約22万円と大きな差が生じていることが分かります。
また東京都の保育士(平成25~30年までの登録保育士)を対象にした東京都保育士実態調査では、離職理由の1位が「給料が安い」、2位が「仕事量が多い」、3位が「仕事時間が長い」となっており、給料が労働内容に見合っていないと感じて保育士を辞めてしまう人が多いことが分かります。

現在日本は少子高齢化が急速に進み、出生率の改善が課題になっています。また労働人口の減少から、女性が社会で活躍する仕組みを整えることも重視されています。これら社会問題を解決するために必要なのが、保育支援サービスの充実です。
しかし、保育所をたくさん増設したとしても、そこで働く保育士が見つからなければ待機児童問題を解消させることはできません。保育支援サービスを充実させるためには、保育士の賃金を公的に補助し、保育人材を確保する仕組みが必要なのです。

国が行う保育士の処遇改善等加算

国が行っている保育士の処遇改善施策には、平成27年に導入された保育士処遇改善等加算Ⅰと平成29年に導入された保育士処遇改善等加算Ⅱがあります。どちらも保育士の賃金を底上げする目的がありますが、賃金アップの対象者や仕組みに違いがみられます。

保育士の処遇改善等加算Ⅰとは

保育士の処遇改善等加算Ⅰは、簡単に言えば保育施設全体の保育士のキャリアを考慮したうえで補助金を支給する制度です。この制度には保育士の賃金を上げるとともに、保育士の処遇改善の実態について詳しく把握するという目的も含まれています。
処遇改善等加算Ⅰは次の3点を考慮して行われます。

・保育施設で働く職員全体の平均経験年数(キャリア)
・賃金改善を行っている施設かどうか(賃金改善計画書+賃金改善実績報告書の提出が必要)
・研修の計画、実施、役職に応じた待遇などキャリア支援を行っているかどうか

処遇改善等加算Ⅰの対象者は、非常勤を含む保育士全体です。役職などにとらわれず、柔軟に分配できる点がメリットです。

保育士の処遇改善等加算Ⅱとは

保育士の処遇改善等加算Ⅱは、新しい役職を創設し、その役職に対して賃金補助を行う制度です。この制度に伴い、いままで役職の少なかった保育士の業界に「職務分野別リーダー」「専門リーダー」「副主任保育士」という3つの役職が誕生しました。保育士処遇改善等加算Ⅱには、保育士が専門性を高める機会を作り、キャリアパスを描きやすくするという狙いが込められています。

その他の取り組み

国が行う保育士の賃金を上げるの試みは、様々な施策の中で行われています。
平成27年には「こども子育て新制度」の中で、保育士の賃金を3%上げる取り組みが行われました。平成29年には公務員賃金の改定に伴い、認可保育園の保育士の賃金が上昇しました。この年保育士の賃金は平均2%上がっています。
また令和元年10月に消費税が増税となりましたが、この財源の使い道の1つに保育士待遇の改善があります。令和元年4月には、保育士の賃金が月額3,000円引き上げられています。

国が行う施策で保育士の処遇は本当に改善されているの?

様々な施策を背景に、保育士の賃金は上昇しています。内閣官房内閣広報室の『「保育士数」と「保育士の年収」の推移』によると、保育士の年収は平成22年と平成30年では額にして33万円ほど増えています。

一方で、賃金の上昇を実感できない保育士もたくさん存在します。なぜなのでしょうか。
補助金の多くは、保育士個人ではなく申請を行った保育施設に対し給付されます。補助金をどのように分配するのかは施設に任されており、保育士からは見えにくくなっています。補助金は手当や昇給に紛れて、気が付きにくくなっているのかもしれません。また中には補助金を別の目的に使ってしまう保育施設もあるため、国は調査や周知に力を入れています。
保育士側も、補助金が賃金に上乗せされているか確認する、補助金を適切に使う施設を選ぶようにするなど処遇改善に対し自分から行動していくことも大事です。

各自治体が行う独自の処遇改善制度

保育士の処遇改善については、個別で施策を行っている自治体もあります。保育士不足に悩む大都市では、手厚い支援が受けられる可能性が高いです。

家賃補助する処遇改善制度

保育士の家賃を自治体が補助してくれる制度です。家賃補助の処遇改善制度には様々な種類が存在します。例えば以下のような補助制度があります。

①寮や社宅を格安で借りられる
②保育士が借りている賃貸物件の家賃を一部補助してもらえる
③毎月定額の家賃補助金が支給される
④借り上げ社宅に無償・格安で入居できる

④の借り上げ社宅の制度は大都市の多くが採用しており、大阪府大阪市、東京都世田谷区、京都府京都市などで利用できます。

自治体独自の賃金を上乗せする処遇改善制度

千葉県船橋市では「ふなばし手当」という保育士を対象とした手当金が支給されます。月額にして42,470円、賞与には年76,670円が上乗せされるため、年間では58万6,310円もの手当金を受け取ることができます。
経験年数問わず、フルタイムのパート職員(1日6時間以上、月20日以上勤務の社会保険加入者)も対象となっているため、雇用形態を問わず保育士の賃金アップを支えています。

キャリアアップ補助金制度

キャリアアップ支援の取り組み費用として補助金を受け取れるのが、キャリアアップ補助金制度です。東京都が導入している補助金制度で、月額2万円ほどの賃金アップが想定されています。また東京都内の各地区(あきる野市、港区)などが個別に設定しているキャリアアップ補助金もあります。

帰省費用などの支援

自治体によっては、ユニークな支援制度を実施しているところもあります。大阪府大阪市では「大阪市保育士ウェルカム事業」と銘打ち、新採用保育士の帰省費用や市内遊興施設の年間パスポート購入費を補助した保育施設に対し、最大85,000円の補助金を給付しています。

保育士の賃金は徐々に上がっている

保育士_賃金の上昇

幼児教育の無償化が実現した今、保育人材への需要はどんどん高まり、保育士の賃金を上昇される施策が次々と行われています。

国としては、主に保育士全体を対象にした賃金補助制度の「処遇改善等加算Ⅰ」と特定の役職を対象にした賃金補助制度「処遇改善等加算Ⅱ」の処遇改善制度に取り組んでいます。
また、各自治体が個別に取り組んでいる処遇改善制度も多くあります。
これらの処遇改善への取り組みによって、保育士の賃金は毎年アップしています。今から保育士を目指す人が保育士になるころには、保育士=低賃金重労働という図式は崩れているかもしれません。

一方で保育施設によっては補助金の申請を行わなかったり、補助金を適切に保育士に分配しなかったりするところも見られます。保育士側からも、条件の良い保育園を選ぶといった待遇改善のアプローチが必要です。

投稿者プロフィール

ホイシル編集部
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