【保育士の国家試験①】実技試験を徹底解説 目指そう保育士

【保育士の国家試験①】実技試験を徹底解説

保育士の資格を取得するためには、2つの道があります。短大や大学のような保育士養成施設を卒業するという方法と保育保育士試験に合格するという方法です。
保育士試験では1次の筆記試験に合格すると、2次の実技試験に進みます。両方の試験に合格すると保育士資格が取得できます。

ペーパーテストの筆記試験に比べて、試験の概要が分かりづらいのが実技試験です。この記事では保育士試験の中の実技試験について解説をしていきます。

保育士資格とはどういうものか

保育士資格は保育士の仕事をするために必要な資格です。国家資格である保育士は保育の専門家と位置付けられ、乳幼児の養護、教育、保護者の育児支援などに携わります。

保育士の職場

保育士の職場としては、保育園以外にも児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設、助産院などが想定されます。また企業内保育所といって、会社の中に設置された保育施設で働く保育士もいます。

なお、保育園に似た職場に認定こども園という施設もあります。認定こども園は簡単に言えば保育園と幼稚園の特徴を併せ持った施設です。幼保連携型認定こども園で働く場合は、保育士に加え幼稚園教諭の資格が必要です。
※ただし経過措置として令和7年3月31日までは保育士、幼稚園教諭のどちらかの資格を持っていれば勤務が可能です。

保育士の仕事内容

保育士の仕事内容は、乳幼児の生活補助、行事の企画運営など多岐にわたります。保護者に対する育児相談に応じることも保育士の業務の1つに位置付けられています。核家族化による親の孤立や不安を取り除き、育児のパートナーとなることで、児童虐待などの問題を防ぐ役割が期待されています。

このような保育士業務の中でも特に重要なのが、年齢と発達に応じた保育活動を計画・実行していくことです。保育士は子どもたちに、なわとびやかけっこ、合奏、お絵描きなどさまざまな遊びを提供します。遊びはただ子どもたちを楽しませるだけでなく、生きていくうえで必要な力を身に着けられるように計画されるものでもあります。

よりよい活動のために事前に計画書類(月案、日案、行事案等)を製作するのも保育士の重要な仕事の一つです。活動の後には内容を振り返り、評価文を書いたり保育士同士で会議を開いたりして今後の保育に活かしていきます。

 子どもたちを遊びに引き込むには、一定の技術が必要です。実技試験では遊びの場で必要とされる、楽器演奏、素話、絵画技術の3つの分野について保育士としての能力があるかどうかを問われます。

保育士資格の国家試験

保育士試験は筆記試験(1次試験)と実技試験(2次試験)で構成されています。1次試験に合格すると、2次試験を受験することができます。

実技試験

実技試験には「音楽に関する技術」、「造形に関する技術」、「言語に関する技術」の3つの受験分野があり、受験者はこの中から2つを選びます。2つの科目両方に合格しなければ、保育士資格を取得できません。
具体的な試験内容は以下のようになっています。

・「音楽に関する技術」は課題曲の弾き歌い
・「造形に関する技術」は色鉛筆での絵画
・「言語に関する技術」は素話(絵本などを用いないお話)

「音楽に関する技術」では試験時間が設定されていません。「造形に関する技術」では試験時間は45分、「言語に関する技術」では3分になります。

筆記試験

筆記試験では、9科目のテストが実施されます。出題形式は5択のマークシート方式になります。
筆記試験は実技試験の前に行われ、 筆記試験9科目すべてに合格しないと実技試験に進むことはできません。
筆記試験についての詳細はこちらの記事をご参照ください。

実技試験

では、実技試験について各分野ごとに試験の概要や採用基準、気を付けるポイントなど見てきましょう。最後には過去問も紹介していますのでご参考ください。

音楽表現(弾き歌い)

ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかの楽器演奏をしながら歌を歌います。なお、ピアノは会場に用意されていますが、ギター、アコーディオンは持ち込みになります。
あらかじめ課題曲は決まっており、簡単な楽譜も与えられています。受験者はこの楽譜を編曲するか、市販の楽譜を用いて演奏を行います。自分の声域にあわせて、移調することも可能です。

音楽表現の採点基準

歌や伴奏の技術が身についているかどうかを評価されます。50点満点中30点以上で合格です。

音楽表現の気を付けるポイント

楽器演奏といっても、プロのピアニストのような高等技術が要求される試験ではありません。あくまで保育士としての技術を問う試験なので、大声かつ明るい表情で歌うことが大切です。自信を持って歌うことも合格に近づくカギです。

楽譜は余裕をもって弾けるものを用意し、和音を短音に変えるなど楽に演奏できる工夫をしましょう。途中で少し伴奏を間違えても、演奏を止めないことが大事です。

音楽表現の過去問

以下課題2曲の演奏
1.『どんぐりころころ』 (作詞 :青木 存義 作曲:梁田 貞)
2.『バスごっこ』 (作詞:香山 美子 作曲:湯山 昭)

【ポイント】
可愛らしい雰囲気の『どんぐりころころ』と元気なイメージの『バスごっこ』がテーマです。歌声などで2曲の持つ雰囲気の違いを出せるように気を付けます。弾くテンポもかなり違ってきますので、どちらも同じようにならないように注意です。

造形表現(色鉛筆画)

A4の画用紙に色鉛筆で絵を描く試験です。例年保育の1場面について描く問題が出題されています。どんな場面を描くのかは受験開始時に伝えられるので、事前準備はできません。
また、絵の中に表現しなければならない要素も指定されます。時間内に鉛筆で下書き→色鉛筆で色付けまでを行うので、上手に時間を使う必要があります。

造形表現の採点基準

保育の場面について、情景や人物の表現および配色について評価されます。50点満点中30点以上で合格です。

造形表現の気を付けるポイント

テーマが事前に分からないため、様々な保育の場面を想定して練習を積む必要があります。保育場面によく出る道具、季節感のある小物、動物や花はすぐに描けるようにしておきましょう。

試験本番では下書きにこだわっていると、すぐに時間が無くなってしまいます。下書きの鉛筆画はできるだけラフに書いて、色付け時に具体化するようにしてください。また下書きの段階でテーマとともに指定される条件(子ども〇人、保育士〇人以上を描くなど)を確実に満たしているかどうか確認してください。

造形表現の過去問

テーマ「4歳児クラスが夏に楽しく菜園活動をする様子」

条件 子ども3名以上、保育士1名以上
   季節や園庭の様子が分かるようにする
   花や野菜の世話をしている様子を描く

【ポイント】
夏という季節が指定されているので、夏の野菜や花が見た人に判別できるようにはっきり描くようにします。夏を表す小道具(セミ、ひまわり、うちわなど)を入れてもよいでしょう。また花や野菜に水をやったり、野菜を手に持って会話したり等、3名(以上の)子どもの動きに個性を付けると、楽しそうないきいきした絵に仕上がります。

言語表現(素話)

課題として指定された4つの昔話から1つを選び、試験官の前で3分の素話をします。なお指定されているのは昔話の題名だけなので、暗記元の絵本やテキストは自分で探すことになります。会場への人形、絵本、台本の持ち込みは禁止です。身振りや手ぶり、表情で話を盛り上げていきます。

言語表現の採点基準

声の出し方や、身振り手振りなどの表現、幼児への話しかけ方などを評価されます。50点満点中30点以上で合格です。

言語表現の気を付けるポイント

目の前には子どもに見立てた椅子が用意されているものの、その向こうでは試験官数名がじっと受験生を見つめている状態で素話をします。大変緊張する場面ですが、委縮して声が小さくならないように気を付けてください。また話の筋だけでなく、表情や身振り手振りで話を表現するようにしましょう。

緊張すると早口になりがちなので、時々意識して間をとるとよいでしょう。ただしあまりゆっくりしゃべっていると、時間切れになってしまう可能性もあります。練習時にはタイマーを使って、3分の感覚をつかみながら練習することをおすすめします。

言語表現の過去問

以下4つから1つを選んで素話をする。3歳児クラス15名に聞かせることを想定する。
1.「おむすびころりん」
2.「ももたろう 」
3.「3びきのこぶた 」
4.「3びきのやぎのがらがらどん」

【ポイント】
それぞれのストーリーの特徴が違うので、自分が好きな話や声のイメージに合った話を選ぶとよいでしょう。どのお話にも、同じ場面や歌の繰り返しが登場します。話が覚えやすいのはメリットですが、手ぶりや表情などを工夫し、単調にならないような工夫が必要です。また、長めの話はどうしても時間がオーバーしやすいです。時間を計ってみて、いつも3分をオーバーしてしまう話は選ばないようにしましょう。

保育士試験の実技試験では、何を求められるかを理解して対策しよう!!

保育士の実技試験には、弾き歌い、色鉛筆画、素話の3つの分野があり、このうち2つを選んで受験します。2つの試験で6割以上の得点が取得できれば、合格です。
試験時間内に十分なパフォーマンスを発揮するためには事前の練習がかなり重要になってきます。
ただし実技試験では高度な技術が必要とされるわけではありません。
実技試験では自分が得意な分野を選ぶことができるのもメリットです。例えばピアノを弾いたことがないなら弾き歌い以外の分野を選ぶことができます。
実技試験は筆記試験に対し合格率が高く、実技試験に進んだ人の8割は合格できるといわれています。「実技試験は難しそう」と躊躇することはありません。実技試験で培った技術は保育現場で必ず役に立つはずです。子どもたちの前に立った自分を想像して練習すると、試験でも楽しく乗り切れるかもしれませんよ。

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