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【後編】子どもの無数のワクワク・キラキラを家庭へと広げられる仕組み(2年目保育士鼎談)

ChaCha Children Daikanyama
公開日2022年8月25日

今回お話を聞いた方

やざわ
やざわあいり (2歳児担任)
いたがき
いたがきななこ (0歳児担任)
うえの
うえのはるな (0歳児担任)

もともと0からなにかを作り上げるのが楽しいタイプなので新園に配属されてうれしかったです。 1年目でもたくさん意見を聞いてくれて、任せてくれるのはうれしいし、楽しいし、大変だけど自分の身になりました。

ChaCha Children Daikanyama の入口すぐにあるChaCha Cafe。 ここは、スタッフ同士はもちろん、スタッフと保護者、そして地域の人々が交流するためのスペース。

中央にコミュニケーションがとれる大きなテーブルと椅子があり、部屋いっぱいに子どもたちの絵やドキュメンテーション、手作りの雑貨が並んでいる。

ドキュメンテーションとは、子どもの活動を写真を使って記録し、ふり返ることにより保育の質を向上させるためのもの。ChaCha Children&Co.では、子どもたちが「何に興味を持ち、何を感じて、何を知りたがり、その中で何を学び、どのように成長しているか」をドキュメンテーションにより「見える化」することを大切にしているという。

後編では、子どもたちの育ちを共有する文化について2年目を迎える保育士三人にうかがった。(前編は こちら )

観察、想像、対話からなるドキュメンテーションは、子どもの無数の可能性を広げるきっかけとなる

ーChaChaの保育ではドキュメンテーションが欠かせないと聞いています。どのように作成されているのでしょうか?

ななこさん :私たちにとっては「ドキュメンテーションを書く」ことじゃなくて、「この姿を残したい」という気持ちがスタートです。子どもたちの目がキラキラしているとき、心が動いているときを残したくて、記録しています。去年はテーマが「なんだろう、このきもち。」だったので、その瞬間の子どもがどんな気持ちなのかを考えます。一人ひとり違うから、想像しながらこうかな、こうかな?と…。

ー「テーマ」とは…?

あいりさん :各クラスにクラステーマがあり、決まったテーマをもとに日々の遊びや活動を考えるんです。私の担任しているクラステーマは「キャンバス~今日はどんな色にぬろうかな~」。砂遊びや見立て遊び…いろんな遊びのなかで、子どもたちが自分の持っている色をキャンパスに塗っていくような瞬間を見つけると「ドキュメンテーションに書こう」と思います。写真は常に撮っているので、そのために撮影するということはないですね。

ななこさん :私は去年も今年も0歳児クラスを担任しています。0歳児の去年のテーマが、先ほどお伝えした「なんだろう、このきもち。」だったんです。0歳児はまだみんなが同じ活動に興味をもつということがないので、一人ひとりの興味にあわせて活動をしています。

そこで、発達の過程で大人との関わりを経て、次第にお友だち同士でもつながりが生まれ、お友だちとの関わりのエピソードへと発展していく様子をドキュメンテーションにまとめました。

今年度、園庭などで、1歳児クラスに進級したこの子たちに会うと、人とのつながり、関係が広がっているのが見えることがあります。大人との関わり、同じクラスのお友だちだけでなく、年上のお兄さん、お姉さん、年下の子……いろんな人との関わりが増えています。

心の動きを「見える化」させることで、変化に気づくことができます

ー世界が広がっていることを実感されているんですね。子どもの気持ちを想像しながら書くということですが、実際に子どもたちに気持ちについて聞いてみることはありますか?

ななこさんはるなさん :うちのクラスの子たち(0歳児)はまだ…言えないので……

一同 :笑

あいりさん :2歳児クラスでは、お部屋に写真を貼っています。やったことをふり返ったり思い出したり、ほかの子はこういうことやっていたんだと気づくきっかけにもなって、すごく興味をもってお話ししてくれる子もいます。

たとえば、恐竜の制作をしたときのこと。

「恐竜ってこんなに大きいんだ!」ということを感じてもらえたらいいなと思い、まずGoogleで恐竜を3D表示したものをお部屋に投影しました。それから制作をし、完成したものを手に持ってもらって写真に撮ってお部屋に置きました。

そうしたら、「ここはトンネルみたいにつくったんだ!」って、制作中には話してくれなかった工夫を説明してくれたんです。文字は読めないけど、写真を見てふり返り、こうして説明することができるんだな~と感心しました。

ー活動に集中しているときは言葉にならないものを、後から聞けるのは、写真というきっかけがあるからこそですね。このChaCha Cafeにもドキュメンテーションが貼ってありますね。この『がらがらどん』※を読んでいるのは…?

あいりさん :はるなさんですね。

はるなさん :ちょうどこれが、どうしたら活動が広がっていくのかで悩んでいたときです。

帽子をかぶって「がらがらどんごっこ」をしたのですが、トロルを実演する友だちの様子を遠くから見守っている子がいました。その子の世界をどうやって広げたらいいのか…と悩んでいたんです。でも、その子がブロックコーナーでは役になりきって、自然と声が出てきていて……自分で演じるのは苦手でも、ブロックをトロルに見立てると自然と役に入り込めるんですよね。こういうところだったら大丈夫だという姿が見えてきて、私のなかのイメージも広がりました。

ーその積み重ねにより、保育の専門性が磨かれていくのですね。ひとつのテーマを通して、子どもの無数の可能性に気づいていく様子がうかがえます。

※絵本『三びきやぎのがらがらどん』(福音館書店刊)のこと


ドキュメンテーションを通して、対話とコミュニケーションが生まれ、つながる輪

ーこのドキュメンテーション、どのくらいの頻度で作成するんですか?作るときは、一人で?

はるなさん :頻度は1か月に1回くらいでしょうか。私とななこさんは同じクラスなので、一緒に作ることもあります。

ななこさん :ドキュメンテーションを作るときも「私はこうだと思う」と言うと、はるなさんは「えっ、こうじゃない?」って別の考えをしていたり、対話が生まれます。スタッフ同士でも違うことを考えている、違う見方をしているんだなってその度に思います。

あいりさん :去年、「Find my beat」というテーマで、心が揺れ動く瞬間を大事にしてきました。いろんな活動をしてきたけど、まとめたものを振り返ると、一人ひとりの心が動く瞬間って違うということがよくわかります。

今年、私はこの子たちと一緒に2歳児クラスにあがったんですけれど、昨年度自分の遊びに集中して揺れ動く瞬間を大事にしてきたからこそ、今みんなで活動するとなったとき、それぞれの気持ちを大切にしながら一緒に遊び、遊びを広げているなあってことを感じます。初心を思い出す意味もあり、ここに飾ってあるドキュメンテーションをときどき見に来ています。

はるなさん :ドキュメンテーションを飾っていることで、お迎えにいらした保護者からも「こんなことしてるんだ~」と活動に興味をもっていただいたり、それに対して写真だけでは伝わらない細かいエピソードをお話したり、スタッフと保護者のコミュニケーションのきっかけにもなっています。保護者の方に保育園での姿をお見せすることがなかなかできないので、ドキュメンテーションを通じて届けていきたいですね。

子どもたちの成長の記録であるドキュメンテーションは、保護者に活動を伝えるものであり、保育者が自らの保育をふり返り、積み重ね、広げていくためのツール。そして、スタッフと子ども、スタッフと保護者、スタッフ同士の対話にもつながっている。

ChaCha Children Daikanyamaに通う保護者からは、子どもと保護者の対話の広がり、保護者の気づきになっているという声が寄せられた。

「活動報告に書かれたことを(子どもに)伝えると、細かいエピソードを教えてくれます。そこから友達とのコミュニケーションやその時々に感じていることがわかり、発想のおもしろさや感じ方の違いなどに気づかされることも多いです。」(保護者インタビューより抜粋)

ー保護者さんからは、年次が変わって担当ではなくなっても声をかけてくれたり、コドモンの活動報告に書かれていたことを伝えると子どもから細かいエピソードが聞けるといった、みなさんの細やかなご対応について感謝の声が寄せられています。保護者さんとのエピソードで、印象残っていることはありますか?

あいりさん :私は学年が持ち上がりだったので、保護者から「わー、うれしい安心しました」というコメントをもらって、「こんな自分でも安心したと言ってくれるんだ!」と、より子どもを預かる責任を感じたのをよく覚えています。

連絡帳に毎日の子どもの様子を書いてくださったり、私たちが書いた連絡帳の内容について細かく返信してくださる方が多く、いつもこちらが元気をもらってます!

はるなさん :園での活動についてご報告すると、ご家庭でその体験を広げてくれることもうれしいです。園でモービルを作ったというご報告に対し、作り方を聞いてくださって、お伝えすると、「家でも作って、飾ってみたら子どももとっても喜んでました!」と教えてくださったり。

ななこさん :そうそう。私も、ピアノを弾いていたことに対して、連絡帳で伝えたら、「家でもキーボードを出してみました!」と言ってくださったり。

はるなさん :「ChaChaの保育のファンです~」と言ってくれる方も多いんですよ。ドキュメンテーションなどもご覧になって、「ChaChaに預けてよかったです」と言ってもらえるとうれしいです。

「ChaCha Children&Co.」には、子どもたちを真ん中にした、社会のさまざまな人からなるコミュニティの場でありたいという想いが込められているという。

「園生活で体験したことがもっと家庭で深まるように週末の予定を組んだりしています。(略)これをもう少しやりたい希望があると聞けば、家庭でさせられるようにしています。」という保護者の声からも、園とスタッフとともに一緒に子どもを育てている、保育がその場その場だけのものではなく、園と家庭とつながって、広がっていることがうかがえる。

限られた時間だけ子どもを預かるのではない。家庭とともに「未来の主役」を育む保育。ChaCha Children&Co.では、それが実現されている。

■編集後記

インタビューからも三人が日頃から対話を重ね、子どもたちや互いへの理解を深めていっている様子がうかがえました。自分の意見や考えを日々の保育に反映でき、責任ある仕事を楽しみながら切磋琢磨されている様子に感銘を受けました。

撮影時には、絵の傾きをなおすはるなさんの背中のエプロン紐がねじれていることに気づいたあいりさんとななこさんが正してくれる一コマもあり、同期同士の気さくな関係も垣間見えました。

園長先生をはじめ、ほかのスタッフのみなさんとのやりとりにも、わきあいあいとした雰囲気があり、木のぬくもりある園内の雰囲気も相まって居心地のよさを感じます。

■保護者からの声(アンケートより抜粋、編集)

・いつも温かく子供達の成長を見守っていただき大変感謝しております。 子どもを一個人として尊重し、個人の興味を育む保育方針をしっかりと実践しつつ、子ども達や両親にとっても安らぎを感じられる雰囲気が気に入っています。子供にまつわるエピソードをお話頂くこともあり、園全体で子供の成長を見守っていただいていることが感じられ、安心しております。

・ご担当の先生はじめ、調理室の方々、事務所の方々、みなさんあたたかく挨拶や声掛けをしてくださり、親として安心して子供を預けられます。園全体で成長を見ていただけていることをとても感謝しております。毎日、保育園に行くことを楽しみにしている娘の姿を見ると、親としてとても幸せを感じます。

先生方の押し付けない教育は大変ありがたいです。子供の意見、行ったことに対してジャッジせず、本人に考えさせる姿勢を徹底していると思います。親として学ぶことが多いです。自発的な能力を引き出していただいているように思います。

活動を報告していただくと、家庭ではできないことを体験させていただいており、親の視点では気がつかない点も学びが多いです。友達とのコミュニケーションやその時々に感じていることがわかり、発想のおもしろさや感じ方の違いなどに気づかされることも多いです。

施設情報

形態
認可保育園(113名)
設立
2021年
所在地
東京都渋谷区恵比寿西2-13-5